映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史には、監督デビューの作品イメージがあるようです。




【映画界のグランマ・モーゼス】


気が付くとプロジェクトを7つ抱えていた。劇映画、ドキュメンタリー、長・短、企

画、脚本、撮影、その組み合わせ、または全部ひとりで。いろいろやっては来たけれ

ど、どれを取ってもプロの域に達している訳ではない。好きでやっているだけなのだ。

ただ幸いなことに、それを仕事として続けて来られただけのこと。有難いかぎりだ。


結局自分は何をしたいのかと自問すると、上記以外のまだ成し遂げていない事だと気

付く。監督だ。性格的にも才能的にも無理は承知の上で、開き直ってドン・キホーテ

の如く見果てぬ夢を見る。目指すは映画界のグランマ・モーゼス。以前にも書いたか

な?80歳で長編デビューする。テーマは「明るい死」としよう。


昔、『ラストコンサート』という映画があった。主人公の女の子が白血病で死ぬ設定

で、挫折したピアニストと恋に落ち、彼を立ち直らせて自分は死んでいくと言う、今

となっては世界中で作られていそうな内容だった。当時ティーンエイジャーだった私

にとって、若く美しい主人公の相手が父親みたいな男性だったことが受け入れ難く、

決してのめり込みはしなかったものの、主人公が亡くなるラストの明るいイメージが

どうにも忘れられない。凡作と思いながらも心に残る一本となった。


最近、やたら国際共同製作の話が来るし、これからは海外にも目を向けなければと思

っていたところ、調べて気付いたのだけど、本作は40年以上も前に作られたのに、な

んと日伊の共同製作だったのだ!そんな昔から共同製作をやっていたのか…と驚いたけ

ど、よくよく考えると、大島渚やら黒澤作品なんかも海外資本が入っていたなぁ。驚

くことではなかったか…。


そしてもう一本、TVドラマだったかもしれないが、タイトルもストーリーも忘れてし

まった作品がある。ピーター・フォークとジル・クレイバークのドラマだ。女性が亡

くなったことを知り、男性がお墓を訪れる。墓石に書かれていた言葉を正確には覚え

ていないが(結局なにも覚えていないわけだ)、「じゃあ、お先に行ってます」みたい

なことが書かれていた。この世界と天国が地続きであるかのような、死というものが

大ごとではないかのような印象に、やられた。この記憶も曖昧だから、もう一度観た

いな。


『ラストコンサート』
1976年/94分/カラー/イタリア・日本
監督 ルイジ・コッツィ
脚本 ルイジ・コッツィ他
撮影 ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
音楽 スティルビオ・チプリアーニ
出演 パメラ・ヴィロレージ、リチャード・ジョンソン


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