映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、本気で犬とつき合う若者たちに共感しました。
『犬部!』
篠原哲雄監督作品『犬部!』が一般公開された。初日の舞台挨拶に行こうと思ったら、
チケットは売り切れで願い叶わず、後日YouTubeで観ることに。映画本編は試写で観
ているからいいのだけど、応援に行きたかったなぁ。
某大学獣医学部の犬好きな学生颯太が、実験犬を救ったことがきっかけとなり、一匹
でも多くの犬の命を救おうと、サークルを立ち上げる。それが犬部だ。大学を卒業す
ると、仲間たちはそれぞれの道を進み、颯太は獣医となる。16年の月日が流れ、颯太
がある問題を起こしたことにより、犬部の仲間たちが集結するが、そこに来るはずの
仲間がひとり欠けていた。動物保護センターで働くうち、殺処分を止めることができ
ず、心を病んでしまった親友だった。
実験犬、動物虐待、殺処分、犬の養子縁組など、犬を取り巻く様々な問題が描かれる。
たとえ犬を飼っていなくても人間にとって古くからの友である犬の生きる環境は、否
が応でも考えさせられる社会問題だろう。人間の、大人の都合で命を奪われる犬たち
を、一匹でも多く救おうと立ち上がる獣医学生の思いが熱い。時に社会のルールをも
超えて起こす行動は、青春ならではの爽快さ。思考停止し、ルールを変えるより従っ
て無難な生き方をする大人にはチクリと痛いかもしれない。本作は声高に社会運動を
煽るものではないが、そんなチクリが随所にちりばめられている青春映画だ。犬の映
画ではあるものの、所謂かわいいチワワみたいな犬は出てこない。そこに持って行か
れる作品ではなく、あくまでも前に進んでいこうとする若者の青春映画なのだ。篠原
監督の青春映画には清涼感がありながら、常に何かしら現代社会を見つめる視線があ
る。押し付けにならない緩い骨太さ加減がいい。そして、犬好きとして思うのは、飼
うならちゃんと看取る覚悟でいてほしいと言うこと。そうする価値があることは何度
か経験してきたので、言える。
2021年/69分/カラー/日本
監督 篠原哲雄
脚本 山田あかね
撮影 鶴崎直樹
音楽 GEN
出演 林遣都、中川大志、大原櫻子、ワンコたち