お墓参り
かねがね気になっていた。
ここ10年ぐらいずっと実行していなかった実家のお墓参りである。
実家を継いだ長姉夫婦は今病気と老衰で、その娘が面倒を看ており、墓参りどころ
ではない状況だ。たぶん今年のお彼岸も行っていないだろう。
そこで、私が代参したい、と思っていた。
それがこのうららかな春日和に実現することになった。
きっかけは、東京に住む息子の「車で送っていくよ」の一言だった。
お墓は高尾にあり、車で2時間。久しぶりの遠出である。
お彼岸はとっくに過ぎているので、人影もなく高尾霊園は静まり返っていた。
案の定、お墓は手入れされず荒れていたので、雑草を抜き、木を剪定し、さっぱり
と整えた。
水をかけると黒々と御影石がよみがえり、墓石の横に掘られた父の短歌、
たたなはる山並み見放く淨き丘
やすらぎ鎮まる代々の霊
が浮き出てきた。
父の代で新しく造った思い入れの深いお墓なのである。
父は早くから死に対して準備をしていて、「死を疎まず、ひとつひとつ欲を手放し、
かっこよく身仕舞いをして、あの世に逝きたい」というのが考えだった。
花を活け、お線香をあげ、お参りを済ませ、ほっと一息ついた。
小高い丘の上にあるお墓は見晴らしがいい。
目の前に新緑におおわれた山が連なり、ときどき遠く野鳥の声がする。コロナでび
くびくする密の都会とはかけ離れ、まるで、別世界いるようだ。
本来、人間はこうした自然の中にいて、つつましく暮らしていたのだろうに。
うららかに晴れ渡った青空の下、途中のドライブインで買ったお弁当をひろげ、息
子とお墓の前で食べた。家族の絆を感じながら・・・ |