●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんは、楽しいイマジネーションの小さな旅をしてます。



シリーズ散歩日和

路地裏の魅力


坂や崖、曲がりくねった道に街路樹、塀越しに見える庭木や家の佇まいなどは、散歩

の愉しみに欠かせない。

だがさらにワクワクさせるものに路地がある。

狭い路地裏には何か秘密めいた生活の匂いがする。

表通りや区画整理された住宅地や土地の広い屋敷町にはない、細分化された猥雑さが

いい。

町をぶらぶら歩いていると、不意に路地が現れる。

え、こんなところに道があるんだ、知らなかった、どこに通じているのだろう、

行ってみようか、行ったら迷子になるかな、なんてちょっとためらっても、好奇心の

方が勝ってつい足を踏み出してしまう。

狭い道に自転車だったり、はしごだったり、ごちゃごちゃと家からでた物が路地裏に

積み上げてあったりして、生活感が一杯だ。

そして玄関の周りには大抵ちまちまと植木鉢が並べてあり、ときには猫除けにペット

ボトルをずらりと並べてあったりする。

私はそこに住んでいる人々を想像する。どんな趣味をもってどんなことを考えてどん

な人生を送っているのだろう・・・

そこには人の暮らしの息遣いがあり、飾らぬ本音が見える。

路地はそこを一般人が行き交うためというよりもそこの住人のテリトリーである雰囲

気が濃いのだ。

そんな路地裏を私は透明人間になったようになって、するりと通り抜けるのが好きだ。


  路地裏の秘密めきたるヒヤシンス


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