●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、なんだかがっかりのようです。



シリーズ散歩日和 4

世相を映すウォールアート


車を運転している娘がつぶやいた。

「ああ、ここのウォールアートなくなっちゃったのね」

高島町から元東横線が走っていた高架下沿いを走っているときだった。

左手の高架下の歩道は、線路から張り出したコンクリートの屋根付きで、道路側がアー

チ状に開いている、いわば地上の地下道のような趣だった。

コンクリート壁があれば、昔は恰好のウォールアート・スポット。

この場所も500メートル位にわたって、様々な絵がコンクリートの壁にスプレーで描

かれていた。ここはかなりレベルが高く、デフォルメされた文字や似顔や言葉が単純化

された形や色が垢抜けていた。

あっという間の鑑賞時間だけど、車で通るときの愉しみだったのだ。

ウォールアートはアメリカ発信のヒップホップ文化だと思うのだが、日本はこんな風景

を汚い「落書き」とみなして禁止する。

こんなところにも日本のお行儀良さとか頭の硬い官僚性が出るのだ。

従って今はすべて消され書き込み禁止となり、間の抜けたただのコンクリート壁になっ

てしまった。

やたらと壁に絵や文字を書くのは反対だけど、場所に限って壁をキャンバスに見立てる

遊び心もいいではないか。

こうした壁の絵には世相が現れる。メッセージ性もある。庶民の主張を手軽に表現でき

る自由さがいい。

 
  人の世に 清濁ありて 石路の花


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