●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、人々の交流の仕方が変わったと感じました。



アフターコロナ


最近ようやくコロナが下火になったようだ。

まだ、行動にさまざまな制限をかけながらも徐々に日常が戻っている。

マスクは欠かせないものの、集会も旅行も会食も復活している。

でも以前とはどこか違う。

電車に乗れば、なるべく一つ置きに座り、会話を控えるのがマナーだし、行列

をすれば、やはり間隔を空け、なるべく密を避ける。

コロナ禍でできなかったこと、諦めたことは数知れないけれど、そのぶん、物

事にあたっての想像力や、会えない人への思いやりが以前よりずっと深くなっ

たような気がする。また逆に会えない人からの自分への思いやりや、勇気づけ

で励まされた。

会えなかった間は決して空白ではなく、想像と思いやりで、なんとか人間関係

を続けていたのである。

しかし会えるようになった今、まったく以前のように思うままに、無意識に、

とはいかない。まず、相手のコロナに対する意識や相手の体調など忖度しなけ

ればいけないことがある。

これは想像力と言うより、五感が働くのである。

五感が瞬時に働いて感じ取り、それを共通のものとして大切にする。

先日、久し振りに大切な友人と再会を果たしときのこと、まずしたのはグータ

ッチだった。それは会えなかった長い期間相手を思い、思いやられていたとい

う厳かな気分にさせられ、忘れられないシーンとなった。

今、人はコロナ禍で耐えたり、奪われたり、諦めたりしたぶん、全身の五感が

今まで以上に働いて、人と人との交流を愛おしんでいるのかもしれない。




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