●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、そこへ昭和感覚を楽しみに行くようです。
シリーズ 住めば都 6
六角橋アーケード
マンション住まいというものはめったに住人と顔を合わすことがない。狭い部屋に一
日居ると人恋しくなることがある。
そんなとき、私が出かけるのは六角橋アーケード街。
そこは30分くらい歩いたところにあり、闇市のような風情を今に残すレトロな商店
街だ。
商店街といっても幅1メートルぐらいの狭い道の両脇に小さな店が、延々と100メ
ートルぐらい軒を連ねている。肉屋、魚屋、乾物屋、八百屋、総菜屋、雑貨屋などの
生活用品を置く店だ。
店の間口も奥行きも狭いので、商品を戸板に並べたり、軒先から吊るしたりしたり、
雑然としているが、商品は一目瞭然。
人とすれ違う時には体を斜めにしなければならない。
戦後の闇市を偲ばせるごちゃごちゃ感がウリなのだ。
この六角橋アーケードは、この昔の闇市感が受けて、一時、マスコミにも取り上げら
れ、ちょっと有名になったが、10年前に火事を出してしまった。
狭く長屋風にびっしり店が立ち並んでいるこの一帯なので、たちまち火が燃え広がり
大火事となった。
その後、元のような店構えでリニューアルされたのだが、やはりあの昔ながらのごっ
た煮感は蘇らず、シャッターをおろす店も出て、価値は半減してしまった。
それでも、スーパーとは違う昭和の面影を味わう楽しみがある。
このたびのコロナ自粛で人はネットショッピングに走ったが、やはりやりとりのある
対面販売の魅力は捨てがたい。
私は、店の主人の呼び込みに誘われて、佃煮を手にすると、主人はここぞとばかりに
説明してくれた。私はつい、財布の紐を緩めてしまうのだ。
柚子味噌買いし六角橋アーケード
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