シリーズ散歩日和3
ジジ友
私が散歩で横丁を曲がると、目の前に犬を連れた老人が歩いていた。どうも絵画教室で
一緒だったTさんらしい。声をかけるとやっぱりそうだった。
「お元気そうですね」
「う〜ん。そうでもないよ。腰は痛いし、まだらボケだし。コロナでどこも行かれない
ので、家にゴロゴロしていると、ウチのバアさんがイヤな顔するんでね、こうして毎日
犬の散歩さ」
「なるべく外へ出た方が体にはいいんですって。犬を連れての散歩なら様になりますね。
私なんかただ手ぶらで歩くだけ」
と笑うと、ジロジロ私を見て、
「マスクに帽子に手袋か…押し込み強盗だな。ま、女だから空き巣狙いか、ハハハ」
だって。
(失礼しちゃうわ、人を泥棒みたいに言って!)心の中で憤慨する私。
そこで、
「そのかわり、この寒い中、Tさんが出たきり老人ならば、風邪を引かないようにしな
いといけませんね。出たきりと寝たきりは一字違いで大違いですからね」
と一矢を報いると、
「出たきり老人かあ、いいなあ、理想だなあ」
ときた。
まったく、皮肉の通じないデリカシーのかけらもない人!
私はTさんのワンちゃんの頭を撫でてから、「お先に」といってすたすたと追い越した。
でもその後、なんだかほんわかと気持ちが温かい。
久し振りの人との出会いで、顔を見ながらの会話。
目元を見ながら笑い顔を見ながら、何の飾らない言葉のやりとりがじんわりと温かいの
だった。
飾りなき言葉飛び交い冬温し
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