映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、映画作りの技術探究も大好きのようです。
『ようこそ映画音響の世界へ』
これは絶対に観ておかないと!しかも映画館で。2度目は立川まで足を運んでシネマ
シティで観ようと思う。
タイトル通り映画音響の世界を紹介してくれるドキュメンタリー作品だけど、映画と
は関係なく胎児が聞く音でスタートする。人間は生まれる前から音を聞いているのだ
と、改めて気づかされる。しかも見えるようになる前から既に聞いているのだ。サイ
レントに始まる映画史とは逆。サウンドが主役である本作の出だしとしてなかなか面
白いではないか。
有名作品の実例をふんだんに取り挙げながら、音響面から捉えた映画史、映画におけ
る音の多様性と重要性、実際に音を作ってきたアーティストたちの紹介がなされる。
『地獄の黙示録』、『スター・ウォーズ』、『プライベート・ライアン』は有名だし、
監督がコッポラ、ルーカス、スピルバーグだと知っている人も多いだろう。でもそれ
らの映画に音の命を吹き込んだウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライ
ドストロームらの名前を知っている人がどれだけいるだろう。他にも多くの音響デザ
イナーやフォーリー・アーティストたちにスポットライトが当てられていて嬉しくな
る。普通に映画を観ていると、そう出来ているのが当たり前の様に感じるだろうが、
その裏で彼らスタッフが技術と情熱を注ぎこんで名作に仕上げているのだ。
本作はハリウッド作品が中心だけど、当然日本にもこの分野はある。時代劇の場合な
どは、実際の音がどうだったか知る人がもはや存在しない。わからないまま作る音も
随分ありそうだ。人が斬られる音はキャベツを切る音だとか、刀がぶつかり合うシャ
キーンは、ドライバーと金属板をすり合わせる音だとか…。ホラー+時代劇に出てく
る「ヒュー、ドロドロ」と言えば?そう、火の玉お化けの出囃子、テーマ曲だ。歌舞
伎の下座音楽として知られるが、一体だれが作ったのだろう。名もなき音響マン…い
たはずだ。
2019年/94分/カラー/アメリカ
監督/ミッジ・コスティン
脚本/ボベット・バスター
出演/ウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライドストローム、
ジョーシー・ルーカス、スティーブン・スピルバーグ他