●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、コロナ禍に友だちを心配してます。



シリーズ WITHコロナの日々 (3)

和菓子屋の嘆き


友人がふと、

「最近、コンビニの和菓子がおいしくなったわね」

という。

それを聞いて、私は幼馴染の和菓子屋のミエチャンの顔が浮かんだ。

ミエチャンがこれを聞いたら、きっと悲しむだろうな、と思ったのだ。

ミエチャンは病身の旦那を介護しながら、息子と二人で昔ながら和菓子屋を守っ

ている。

きれいに形づくられ色づけられた和菓子は、季節感溢れ、雛節句の桜餅、子供の

日の柏餅、夏の水ようかん、春と秋の牡丹餅など行事を彩り、日本人のお茶菓子

としても生活に密着していたのに、最近は生活の変化と共にその存在感は薄れて

いる。

スイーツと称して、次々と新しいお菓子が登場し、趣向も多様化して日常的に食

べられ、伝統の和菓子文化が廃れようとしているのだ。

さらに、コンビニの乱立で和菓子屋はピンチである。

同じ和菓子でも、コンビニと老舗和菓子のものとは製法も手間もまったく異なる

のに、違いがわかる人は少なくなっている。

そして追い打ちをかけたのは、今年のコロナ騒ぎである。

柏餅のあとは大手需要のお茶会も集会もすっかりなくなり、客はめっきり減った。

ミエチャンは、将来を悲観して廃業しようかと思ったという。

そのとき、持続化給付金の話を知った。半信半疑で試しに申請したら、なんと百

万円おりたという。

これで、もうしばらく続けようと思ったが、いつまで持つかわからないと、ミエ

チャンはため息をつく。

コロナは生き残れない業種を非情に選別していくようだ。


戻る