●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、食事を楽しくする方法のひとつも発見しました。



シリーズ 一人暮らしになった(8)

孤食の演出


(ああ、また食事の時間がきちゃった…面倒くさいな…でもやっぱりお腹は空い

ているし…さて、何を食べよう…あれとあれが残っているし…ならばあともう一

品にあれを作れば栄養バランスは良いかも…)

こんな無精な考えを巡らす今日この頃。

見た目や盛り付けよりも、手間を省いて栄養だけの実用一点張り。

本当に一人飯はつまらない。

以前、私は料理をするのは嫌いじゃなかった。

台所に立てば張り切っちゃうタイプだ。

料理ってある種の作品なのだから評価してくれる人がいてこそ、頑張れる。

さらにいえば、食事は人生の一大楽しみであり、命を支えるもの、やりがいがあ

る仕事である。

それが今、一人で作って一人で食べる。これほど寂しいことはない。

友人の未亡人が食事会、食事会って騒ぐ気持ちがようやくわかった。

だが、今はコロナで自粛生活だ。誰かを誘うわけにもいかないので我慢するしか

ない。


  一人飯菜の主役はアサリ汁


そんなこんなの日々、ふと、以前ある人が助言してくれたのを思い出した。

「夕食にお酒を一杯添えなさい」。

そのときは、お酒の弱い私はあまり気乗りしなかったのだが、今、試してみる気

になった。

粗末なおかずのそばに、結婚式の引き出物でもらった豪華なワイングラスにこれ

また極上の赤ワインを注ぎ、一杯添えるのである。

一点豪華! この演出だけで食卓はホテルでの食事に早変わり!

少しばかり孤食のみじめ感が吹き飛んだ。

     
  いい夜は鰻飯と赤ワイン


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