●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんに、人生の辛い局面にさらに新たな局面が。



シリーズ 一人暮らしになった(3)

喪中があけるまで


夫の遺体を荼毘に付すまでの間、毎日葬儀社がきて、ドライアイスを替えていき、

やるべきことをテキパキと手配してくれる。

何もわからずオロオロする私はそうした人々のお世話になって乗り越えることが

できた。

人は言う。“人が死ぬと葬儀から始まっていろいろ煩雑な手続きがあるけれど、

それは遺された者の悲しみを紛らわす役割もあるのだ”と。

まったくその通りで、遺された者は呆然としながらも、喪のための行事や手続き

で慌ただしい日々が続き、その間は寂しい、悲しいという実感よりも滞りなくや

るべきことをやろうという張りつめた気持ちが先立つのだった。

  
  寂しくはないといへども蜜柑ひとつ


四十九日の法要の日は冷たい雨だった。親族が集まり、会食をし、私はまだまだ

一人暮らしの本当の寂しさも心構えもなかった。


  線香の煙の先に冬の雨 


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