映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史は、伸び伸び生きた姉妹に共感のようです。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
原作はあまりにも有名なオルコットの「若草物語」。南北戦争後の1868年に書かれ
た4人姉妹の愛と青春の物語だ。今回はオルコットの生身の人生が平行描写されてい
るのがミソ。
「また安易な邦題だなぁ…」と思い、全く観る気がなかったのに、映画仲間が称賛し
ていたので観に行った。すると観終わって大反省!この邦題、良いではないか。
ニューイングランドに暮らすマーチ家の四姉妹とは、信仰厚く家庭を築くことを望む
長女メグ、男勝りで作家の次女ジョー、純粋に音楽を愛する病弱な三女ベス、画家を
目指すが才能に見切りをつけ、現実的に経済重視の生き方をする四女エイミー。父親
は南北戦争の従軍牧師として出征しており、大黒柱不在の中、それぞれの生きる道を
選んでいく。そんな姉妹の生きた証として、ジョーは「若草物語」を出版し、現実を
逞しく生きるという話。
頻繁に物語世界とオルコットの現実世界が切り替わるため、始めは混乱するかもしれ
ない。しかし色調を変えることでわかり易くなっているし、小説はオルコットの実人
生がベースとなっているため、混乱しても殆ど問題にはならないだろう。この構成が
生きてくるのは、主に終盤、クライマックスを迎えるあたりからだ。ネタバレしない
ため詳細は控えるが、要はこの構成が良いのだ。
本作は4姉妹の話なのに順番がよく分からない。長女が長女に見えないし、末っ子の
逞しいこと!始めはミスキャストかと思ったりもしたが、まるで長女から四女までの姉
妹としてではなく、生き方の違う4人の女性の物語としてフラットに描かれているよ
うなのだ。そう思うとかえって新鮮さを感じる。
三人娘は姦しいと言われたりするが(今は死語かな?)、四人集まって大はしゃぎする
シーンは女子力大爆発で最高に楽しい。女性の潜在パワーとは、ここまで凄いのだと
見せつけているようで、当時の女性たちの社会的地位や地域文化の縛りを思うと、実
に爽快だった。
物語は自分の人生の主人公になれなかった時代の女性たちに温かい眼差しを投げかけ、
強く逞しく生きていく主人公の清々しさをもって幕を下ろす。もう一度観たいなぁ。
※一家には太った召使いがいて『風と共に去りぬ』を思い出したが、黒人でなかった
のは現代のモラルを優先させての事なのかもしれない。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
2020年/アメリカ/135分/カラー
監督・脚本/グレタ・ガーウィグ
撮影/ヨリック・ル・ソー
音楽/アレクサンドル・デスプラ
出演/シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、
エマ・ワトソン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ