映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史が批判も多い映画賞の内部事情と問題点をわかりやすく解説。
第43回日本アカデミー賞
3月6日、日本アカデミー賞の発表があり、最優秀主演男優賞、主演女優賞、作品賞の
メイン3部門を『新聞記者』が占めた。このアカデミー賞、毎年注目を浴びつつも、結
構ネガティブ評価が多い。Facebookなどを見ても様々な批判が書かれていた。
アカデミー賞の選出方法は殆どの人に知られていないため、的外れな批判もある。大手
映画会社に所属していないと投票できないとか、特定の協会に所属していないと受賞は
無理だとか…。そう言いたくなる気持ちはわからないでもないが、ちょっと違う。私な
りに説明してみよう。
まず、年末に投票用紙とその年に劇場公開された作品のリストが、アカデミー賞協会会
員(私の様な無所属のフリーランスも多く含む)の元に郵送される。リストに掲載漏れが
ないよう、呼びかけもちゃんとされる。次に各部門ごとに3作品(人)ずつ選び、投票す
る。その結果、各優秀賞が5作品(人)に絞られる。選ばれた中から各部門の最優秀賞を選
ぶために、もう一度投票する。5作品の中で観ていない作品があるかもしれないため、
最終投票前に品川の劇場などで一週間ほど該当作品が上映される。こうして最終的に選
ばれた作品(人)が発表され、式典がテレビで放送されるという訳だ。
大手の作品は関わる人数も観ている会員数も多いため、票を集めやすいのは否めない。
アカデミーの会員証は大手の劇場でしか通用しないため、チケットを購入して観なけれ
ばならない単館系の劇場で上映されるインディーズ系作品は不利だ。これが主な批判の
根本原因ではないだろうか。いっそインディーズ・アカデミー賞を設立してはどうだろ
う?大手作品を対象外とする、インディーズだけの映画賞を。
話は戻って、今年最も嬉しかったのは、最優秀美術賞を、『キングダム』の斎藤岩男さ
んが受賞したことだった。創作に対する姿勢、深い考察、鋭さ、真面目さ…。凄い人だ
なぁと思って20年になる。アカデミー賞に問題があっても、こうして裏方のスタッフワ
ークにスポットライトが当たるのは、素晴らしいことだと思う。