映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
今年、映画女史の心に残った映画たちと、年越しの楽しみ。




2020年の日本アカデミー賞


今年はコロナの影響で劇場での鑑賞本数がかなり減った。にも拘わらず、観た映画

はどれも素晴らしく、特に青春映画に佳作が多かったように思う。今年の日本アカ

デミー賞の行方は如何に。


例年通り11月に投票用紙が届き、一年を振り返りつつ各部門の優秀作品を投票しな

ければならない。投票する”権利”があるのではなく、投票は”義務”なのだ。3

年投票しなければ、会員の資格を失うことになる。会員証で映画を無料鑑賞できる

のは(一部の劇場で)、なにもタダで見せるためではなく、しっかり選考してもらう

ためなのだ。世間一般に思われているより、その辺は厳しく考えられている。


最優秀賞を取るのは、アニメ部門では『鬼滅の刃』だろうな。海外作品は『パラサ

イト』か『テネット』か。邦画は…。なんてことを思いながら作品リストに印を付

けていくと、この印の多いこと!この中からどうやって各部門3つずつ選べというの

だ…。何に投票したか公表は控えるが、個人的に繰り返し観たい映画を挙げてみよ

う。海外ものは、若草物語を著者自身の人生と絡めた、瑞々しくも骨太な『ストー

リー・オブ・マイライフ/私の若草物語』、ヒットラーを脳内フレンドに持つ少年と

ユダヤ人少女の秘密の交流を描く『ジョジョ・ラビット』、公共の場としての図書

館の再考を試みる『パブリック 図書館の奇跡』。邦画では石坂浩二が素晴らしか

った角川春樹監督最後(?)の作品『みをつくし料理帖』、夫婦の頭と心の中を、集

中力フル稼働で観させられる『スパイの妻』等々。

逆に多くの人が大絶賛しているのに受け入れがたい作品もある。ホロコーストを逃

れ、行く先々で差別や虐待を受ける少年の話、『異端の鳥』だ。映画としては凄い

作品であることに異論はない…が、目玉をくりぬく演出などは暴力のエンタメ化を

感じさせる。また、男性の罪は多様であるのに、女性はお約束の性的誘惑の罪。し

かもよくある使い古された演出だ。あまりに女性観が貧しすぎる。そして主演の子

の人権問題はどうか。9歳の子にどれだけ判断力があったのか。あの映画に出演し

てあんな性的場面を演じさせられたことは一生世間に晒されるのだ。本人ではない

役者を使ったと言われてはいるが、観る者がそうは感じないように上手くできてい

る。将来この事で苦しまないだろうか、いじめにあわないだろうか。考えすぎかな。

年末年始は早稲田松竹で小津安二郎の世界に浸ろう。


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