映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、アメリカの評に異論があります。




実写版『ムーラン』


来年の映画祭で、アニメ版『ムーラン』のバリー・クック監督にお世話になる。今年

はこのアニメを何度観たことだろう。こうなると何かと世間をお騒がせした実写版

『ムーラン』と比較してみたくなる。幸いディズニー+に登録あり、配信を観られる

ので早速チェックした。


ストーリーは概ね同じで、徴兵される年老いた父の代わりに、ムーランがこっそり男

装して軍隊に入り、努力と知恵とご先祖様の助けで国家の危機を救うというもの。ア

ニメ版との大きな違いは2つあり、ミュージカルでない事と、アクションに重心が置

かれていることだ。『美女と野獣』、『シンデレラ』など、ディズニーアニメの実写

版はいずれもミュージカル仕立てになっていたが、本作は音楽があっても登場人物は

歌いも踊りもしない。正面切ったラブストーリーもなく、結構なシリアスドラマだ。

どうもそこがアメリカでの不人気の原因だったようだ。


本作はアメリカでも中国でも興行的に苦戦したらしい(ヒットはしたが大ヒットに至ら

ず)が、その原因は、≪アメリカ側≫ミュージカルじゃなかったことと、アニメ版で人

気を博したリトル・ドラゴンのムシューが出てこなかったこと。それに加えて、主演

女優の米・共和党支持者を怒らせた政治的発言などがある。≪中国側≫配信が先行し

たことによって海賊版が出回ったこと、あまりにもアクションが激しく、ムーランが

スーパーウーマンになっていることなどだ。私などはもの凄いアクションシーンとキ

メのポーズの美しさに、「これぞアジアン・アクション!!」と、すっかり心躍らせて

しまった。コン・リー、ドニー・チェン、ジェット・リーなど、大スターたちが脇を

固める贅沢なエンタメ大作だ。「ディズニー」というフィルターを外して観れば、結

構面白いと思うのだけど…。


『ムーラン』
2020年/アメリカ/115分/カラー
監督/ニキ・カーロ
脚本/エリザベス・マーティン他
撮影/マンディ・ウォーカー
音楽/ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
主題歌/「Reflection」クリスティーナ・アギレラ
出演/リウ・イ―フェイ、コン・リー、ジェット・リー、ドニー・イェン


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