映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、コッポラの話に共鳴しました。




玄関ポーチ理論


前回書いたZoetrope ALL STORY (byコッポラ)を読む。この本の中身はコッポラに

よって見出された珠玉の短編小説集だ。私の知らない作家アリシア・エリアンや、後

に作品が多く映画化されたデヴィッド・ベニオフなど、ストリーリーテラーとして豊

かな才能を開花させた作家たちの7作品が含まれている。早速読み進めているが、コ

ッポラ自身が書いた序章を読んでお腹いっぱいになった。もうこれだけでいい。そう

思えるほどクリエイターとしてのコッポラの思いが凝縮されている。しかも私などが

映画を作る上で抱えている葛藤と、規模は大きく違っても共感することばかりなのだ。

良いストーリーを探し、若手を発掘、自由に出版、映画化…と、出版業界の常識から

離れて世に送り出す。なんだか角川映画みたいだと思いつつも、コッポラの方は採算

度外視だったようだ。


私が関わるD映画祭では、テーマを「Your Story Matters!」としている。物語を大

切にする映画祭だが、映画マニアに「そのテーマ、恥ずかしくないですか?」と揶揄

されることがある。覚悟はしていたものの、もちろん愉快ではない。でも、思えばこ

の質問は、天下のコッポラ、アメリカ映画の一時代を築いた巨匠にも向けられるって

ことだ。寧ろ光栄なことではないか。


更に私の心を鷲掴みにしたのは、ポーランドにある有名な映画学校の話。コッポラが

若かりし頃ポランスキーから聞いたもので、「あの学校の真の素晴らしさは、玄関ポ

ーチにあった」とのこと。学生はそこで食事し、話に花を咲かせる。そこで生まれる

交流や議論などが学校そのものだった…。もっと深い話が続き、コッポラはこれを

「玄関ポーチ理論」と名付けた。D映画祭で目指している事と重なる。私たちもこの

様な場を作りたいのだ。一度もお会いしたことがないくせに、もうすっかり気分はコ

ッポラ監督と同志だ。でもあながち誇張じゃないのかもしれない。なぜならD映画祭

の審査員の一人は、『ゴッドファーサーPart2』のプロデューサーなのだから。


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