映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、革命児のラストムービーを満喫のようです。




【みをつくし料理帖】


高田郁による時代劇小説が原作で、既にテレビで二度ドラマ化され、今回は御年78

才の角川春樹氏が最後の監督作品として映画化したものだ。この映画を、と言うより、

角川監督最後の作品なら観なければ、と言う思いで劇場へ足を運んだ。角川映画と言

えば、邦画界にメディアミックスの革命を起こし、アイドル映画というジャンルを確

立したことが知られている。


1802年大阪。幼なじみの澪と野江は、仲のいい姉妹の様にいつも一緒だった。とこ

ろが水害により、二人の運命が狂い始める。野江は吉原へ売られ、澪は江戸へ流れて

料理屋で雇われる。上方と江戸では食習慣も味も違い、澪の料理は客に受け入れられ

ない。しかし周囲の人たちに支えられ、東西料理の融合に成功して店は大盛況となる。

やがて吉原の幻の花魁・あさひ大夫が野江であるとわかり…。


本作は、運命に翻弄されながらも強く生きてゆく女の子たちの友情物語だ。まるで一

幅の清涼剤の様に清々しく、恥ずかしくなるほどストレートな友情の発露が描かれて

いる。その感じがいい。異論もあろうが、私にとって角川映画は、やはり80年代の

アイドル映画の流れの上にあるもの、それを残していてほしいものなのだ。


東西の文化の差を背景に、庶民と太夫という身分差が障害として描かれ、料理という

小道具・故郷の味が二人を繋ぐ。会ってはならない二人が合言葉ならぬ合図を交わし、

幼き日へと一気に時空を飛び越える。その全てが和のテイストで描かれることが、こ

んなにも心地よいとは。


最近、音に関する映画を観る機会が多かったこともあって、本作でも音の存在から強

く刺激を受けた。コトコトコト、ホクホクホク、トントントン。料理の温かさが音に

乗って伝わってくる。

主人公をはじめ役者陣はみんな素晴らしかった。中でも石坂浩二には涙腺を刺激され

まくり、不覚にも涙してしまった。昔はインテリ臭さが邪魔をしていたのに、今回は

守ってあげたくなるような好々爺。素晴らしかったなぁ。


2020年/131分/日本
監督 角川春樹
脚本 江良至、松井香菜、角川春樹 
原作 高田郁
音楽 松任谷正隆 歌 手嶌葵
出演 松本穂香、奈緒、若村真由美、窪塚洋介


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