映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、アニメ映画の巨匠の足跡をつぶさに確認のようです。
高畑勲展
竹橋の国立近代美術館で、去年亡くなったアニメの巨匠 高畑勲展をやっている。これ
は行かねばと、夏休みが終わるのを見計らって行ってきた。展覧会はいつも2時間ぐ
らいかけるのだけど、あまりの見応えに、気付くと3時間を超えていた。
一つ目のコーナーに壁2面分の年表があり、高畑歴、アニメ歴、世界史が併記されて
いる。ほぼほぼ私の人生と被るので、非常にリアルに感じ面白くて勉強になった。高
畑さんがアニメを目指すようになったのは、1952年に公開されたフランスのアニメ
『やぶにらみの暴君』を観たのがきっかけとのこと。私も大好きな映画なので嬉しく
なった。ものすごく急な階段を勢いよく駆け下りるシーンがあり、これぞアニメ! 実
写ではできない表現だと強烈な印象を受けた作品だ。以降、私のアニメの評価基準に、
”急勾配駆け下りシーンの有無”が入っている。あれば良いと言うもんでもないが…
(笑)。『ルパン三世カリオストロの城』は、ルパンが屋根を駆け下りた勢いで、遠く
の塔の壁まですっ飛び、ピタっと蝉のように張り付く。この場面は最高だった。『千
と千尋の神隠し』にもとても危険な階段駆け下りシーンがあってハラハラする。必ず
しも話の筋と関係なくても、そんなことはどうでもいい。すごいアニメ表現があるだ
けで嬉しくなってしまうのだ。
高畑勲監督は、宮崎駿監督より少しだけ影が薄いかもしれないけれど、常に新しいア
ニメ表現を追求した、偉大な挑戦者だった。線で表現することに拘った結果生まれた
のが『ホーホケキョとなりの山田くん』や『かぐや姫の物語』なのだそう。かぐや姫
が着物を脱ぎ棄てながら走るシーンは絵コンテが一枚ずつ展示してあったが、どれも
ぐちゃぐちゃの線が並んでいるだけで、何が描かれているのかさっぱりわからない。
顔も見えないから感情もわからない。ところがそれが映写されると、見事に感情をま
き散らしながら疾走するかぐや姫になっている。もうこうなるとマジックだ。凄い!
高畑監督の凄さと同時にアニメの凄さ、映画の面白さを実感できる展覧会だった。
『かぐや姫の物語』
監督:高畑勲
原作 : 「竹取物語」
音楽 : 久石譲
声の出演 : 朝倉あき/高良健吾/地井武男/宮本信子
2013年/カラー/137分吾/地井武男/宮本信子