●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、為政者に操作されてゆく空気感の危険性は今も昔も変わらないと感じてるようです。



時代の空気感


最近、若い人と話す機会があった。

最近の日韓対立について話が及んだ。

日本はあれほど韓国を追い詰めることはない、という。

あれは政府対政府の対立でお互いのメンツを立てるための応酬で、一般民衆の気持

ちを置き去りにしているという。

僕たちには関係ない、新大久保へ行ってごらんよ、何のわだかまりもなく、いいも

のはいい、と韓国の良さを受け入れているよ、という。

今の若い人たちはなんの先入観もなく韓国を見ることができている。

それでいいのだと私は思う。

時代も昭和、平成、令和となって、若者にはすでに昭和の歴史は昔の出来事、ピン

とこないようだ。太平洋戦争でさえも年表の中の一部で、日本が野心をもって大陸

へ侵攻し、韓国を属国扱いにしたことも知らない。

私だって直接戦争を知っているわけではないのだけれど、戦後の空気感だけは知っ

ている。

私は子供の頃の体験を若者に話してみた。

韓国を朝鮮と呼んでいたこと、朝鮮人部落といって韓国の人はおもにかたまって住

んでいたこと、日本人は朝鮮人をちょっと蔑んでいたこと。今の年寄りにはまだそ

んな偏見をもっている人がいるかもしれないこと。

朝鮮の人が実際に“朝鮮人、朝鮮人、とて、同じ飯食ってどこ違う”と言い返して

いたのを見たことがある、と話した。

国籍が違うことで差別した日本人のおごり、そのおごりは無謀な太平洋戦争へと向

かわせたおごりでもある。

だが、戦後の半世紀以上のリベラルな教育を受けて個人の権利意識も高い若者は、

みじめな太平洋戦争さえも「そのとき、なんで、みんな“戦争反対”って声をあげ

なかったの?」と言う。

市民が声高にそんなことをいえないというその時代の空気感はわからない。

時の為政者によってその時代の空気感が操作されることもあるのだ。

いま、安倍政権は特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、と続いて憲法改正を

めざしている。そして、韓国を敵国として想定する。

なんだか空気感が戦前と似てきてないか。


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