映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、同業仲間との素の映画話に盛り上がったようです。




未だ観ぬ映画


週末、映画祭のプログラミング・チームと終業が重なり、彼らの”一杯”に別部門

の私も合流させてもらった。彼らは年間1400本にも上る世界中からの応募作品を、

寝食惜しんで片っ端から観まくっている。根っから映画が好きじゃなきゃできない

仕事だ。

そんな彼らとの話はとても面白く、映画祭のプロとしての硬い話が終わると、次は

素の映画好きとしての話が始まる。

まず出てきたお題は、一番好きなウディ・アレンの映画は何か。王道の『アニー・

ホール』と言ったのは意外にも若い人だった。私が『カイロの紫のバラ』だと言う

と、共感する人がいてハイタッチ。

彼らはアメリカのテレビドラマも結構チェックしていて、テレビを見ない私は殆ど

ついていけなかった。かろうじて『奥さまは魔女』を挙げると、さすがに古くて笑

われた。

映画談義は帰りの電車の中でも続く。最後のお題は、超有名なのに観たことない映

画は?だった。これはめちゃくちゃ盛り上がる。なぜなら回答者は映画の、しかも

観る方のプロたちなのだ。年間500本以上見ている彼らに、観ていない有名作品な

どあろうはずもない、と考えるのが普通だろう。しかも飲み会で盛り上がる話でな

ければならない。プロの間で有名なのに観ていない作品、では面白くない。プロも

アマも誰もが当然の様に観ている作品でなければ笑えない。映画を観まくり、しか

も話題作は意識的にチェックする人たちだ。観ていない作品などあるのだろうか。

私自身も考え込んでしまった。観てない作品は多いけど、有名どころはかなり観て

いて、びっくりされるほどのものが出てこない。ところがところが、この中で一番

観ている人の口から飛び出したのが、なんと『トトロ』!世界中にファンがいて、

日本人なら100人中99人が観ていそうなあの『となりのトトロ』を映画のプロ

中のプロが観ていないとは!!

びっくり仰天し、電車の中で爆笑して一週間を楽しく終えた。


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