●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、花々から何か心強いものをもらったようです。



シリーズ 老いの賜物 その4

花のメッセージ


今年の春はあれよあれよという間に過ぎ去っていき、花々も次々と咲いては

儚く散っていった。

時の流れが速い。

我が家の庭も水仙からから始まって椿、梅、姫林檎、つつじ、そして今は紫

陽花である。

私は、3月、4月、と身も心も不調であった。

介護疲れかもしれないし、変化の激しかった気候のせいかもしれなかった。

とにかく、気分転換に庭を眺めて暮らした。

そんなとき、草花が慰めというより、もっと深く命あるものとして心に迫っ

てくるのだった。

なぜだろう? 晩年特有の美しいもの可憐なものへの開眼? 余裕の心?

いやいや、老いていく自分の身に照らして、やがてしぼんでいく花への共感

かもしれない。 

自分の生命力の衰えとともにこうした弱いもの儚いものへと、自分を映し、

自然に心が吸い寄せられるのだろう。

生きとし生けるものすべて、やがては衰え朽ちていくのだと実感して自覚す

るのである。

だからといって、ここで老いを儚んで弱気になるのではない。だって、花た

ちも光を浴び、虫と戯れ、小鳥を引き寄せ、精一杯生を謳歌しているではな

いか。

人間ならもっと個性が活かせる。だって年を経るたびに経験と開き直りの知

恵を培ってきたのだから。

これを成熟といわずになんといよう。


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