漆器と仲良し
八百屋の店先に茄子が一山200円で盛られていた。
黒々とした紫色がつややかに光っていた。
私は早速お買い上げ。
今夜のメニューに茄子のシギ焼き、それから細かく刻んで塩でもんでギュッと絞っ
て生姜醤油和えを添えよう。
歩行困難な夫はほとんど家にいて外食しないので三食家で食べる。私は三度の食事
作りが結構大変である。
ときには既製品を買ったり、手抜き料理でごまかしたりしてしのいでいる。
今夜のごまかし方は器。
そろそろ秋めいてきたし、盛り付けに漆器を使ってみようと思いついた。
真っ赤な盛り付け椀に、茶色の味噌がかかり、白ごまがアクセントの茄子のシギ焼
きをこんもり盛り付け、ゆでた緑のオクラを添えると、なんと大変なご馳走に見え
るではないか。
たった200円の茄子が高級料亭の一品に早変わり。私は大満足であった。
漆器は扱いが難しいという。
湿気に注意、極端な高温低温に注意、傷つきやすいので取り扱い注意、など注意事
項は数々あるけれど、はまると手放せない。
漆器特有の見た目の重厚さ、温かみのある感触、軽量、形のシンプルさがなんとも
味わいがあって大好きだ。それで我が家にも汁椀、盛り付け椀、菓子器、重箱など
少しばかり取り揃えている。
陶器と異なり、漆器はなんたってその存在感とそして“器”の分際をわきまえてい
ること。余計なものをそぎ落とし、出しゃばらず、載せるものを最大限に引き立た
せてくれる。
マンネリ料理を打ち砕く強い味方なのだ。
私は漆器から多くのことを学んだ。
ただあるだけの存在感の凄さ、懐の深さ、自己主張し過ぎない、あるがままを受け
入れる等々。私もそうありたいと願う。 |