映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史のフェバリットアニメの1本をご紹介。
モンスターズ・インク
年末年始の疲れが取れず、"頭を抱えるようなものでもなく目が覚めるようなものでも
ないもの"第二弾として『モンスターズ・インク』を自宅で観た。
数ある洋ものアニメの中で、結構好きな一本だ。オープニングのタイトルデザインがい
きなりカラフルで可愛らしい。まるでソール・バスがデザインした『七年目の浮気』に
もっと遊び心を加えたみたいだ。
モンスターの国では人間の子どもの悲鳴をエネルギー源としており、モンスターズ・イ
ンクという電力会社では、従業員の様々なモンスターたちが夜の子ども部屋に侵入して
悲鳴を収集している。出世競争が熾烈で、成績トップのサリーには当然のことながらラ
イバルがいる。カメレオン+トカゲ+ムカデ÷3のランドールが悪役だ。
随分ひどい設定だと思うのは、この国では人間の子どもは危険な黴菌とされていること。
会社側に侵入されたら特別機動隊みたいなものが出動して捉え、触れたものすべてを滅
菌する。そんな設定なので、物語は勿論子どもの侵入によって大騒動となるのだ。小さ
な可愛らしい女の子が無邪気に遊ぶほど、大きくて怖そうなモンスターたちが悲鳴を発
して逃げまくる。常識の逆転が面白い。こっちの悲鳴の方が余程エネルギーとなりそう
なのだが…。子どもをこっそり元の世界に返そうと奮闘するサリー。ランドールは子ど
もを取り返そうとし、激しい争奪戦が繰り広げられる。こう書くとアクション映画の様
だが、実際にはまるで子育てに奮闘するパパと2才位の女の子の話だ。2才と言えば
「魔の2才児」といわれるぐらい子育てが大変な時期で親が振り回される。
サリーと女の子は親子でも何でもない。なのに子どもを構っているうちにいつの間にか
子どもに対する親心がサリーに芽生える。子どもが処分されたと誤解した時など、死ぬ
ほどショックを受け、何度も大げさに気絶する。まるでこの世の終わりででもあるかの
ように。とても人間的なサリーに素直に泣き笑いさせられ、疲れが少し癒された。
『モンスターズ・インク』
2001年/94分/カラー/アニメ/アメリカ