1/15のねこさん 文は田島薫
ふたりで入ってた
玄関前の3つの段ボール製キャッツハウスのうち、むんが一番気に入ってて元々自
分のもんだ、って思ってるらしいのは一番奥にあるパート1で、いつもそこで寝て
るんだけど、時々、ニケが気まぐれに先にそこ入ってることがあって、そんな時は、
うろうろ外で空くのを待ってたり、夜になっても空かない時はしぶしぶ別のに入っ
てるみたいなのだ。ところが、きょうは朝から寒い上に陽も射さないせいで暖を求
めてなのか、めずらしくベランダに上がって来て怒られてるニケだけでなく、むん
まで上がって来てたもんで、むんに特別やさしい家人は、い〜よい〜よ、などと言
ってたんだけど、けっきょくふたりとも下りてった。で、午後玄関前に行ってみる
と、パート1の箱の奥にニケが寝てて手前にむんがいっしょに入ってて、むんは、
こっちをなんだかにらみつけてる風。
いや〜さみ〜ね〜、お、あいつがまた上がってくとこ見っと上の方に暖ったかいと
こあんのかな〜、あり〜?そ〜でもないよね、それに、おばさんが出て来たらすぐ
あいつ下りちゃったね〜、なんだなんだ、おっかし〜ね〜、やっぱ、ここにいても
暖ったかくもないよ〜だし、下りっか〜、おっとっとっと、わたいの家にまたあい
つが先入って寝てるやがるね〜、ど〜すっかね、出てけ、つっても聞くやつじゃな
いし、わたいんちなんだから、気にしないで、いつものよ〜に何ごともなかったよ
〜に、入ってみっか、よいしょ、ってきついね〜、ん?でも、ちょっと暖っかいか
〜、いやいや、そんなことより、こんにゃろを怒ってもらお〜、ほら、これこれ、
ばかやろ〜でしょ、わたいのうしろで寝てるこいつ。