司馬遼太郎の小説
ようやく、やっと、とうとう、司馬遼太郎の『関ヶ原』を読了した。
なんと厚さ4センチ、754ページの単行本、まるで百科事典みたい。
夫が司馬遼太郎のファンで何冊か家にあったのだが、どれもあまりにも長編なので
根気のない私は敬遠していた。
最近、ぽつぽつ本の整理をしていてこれらを処分しようと手にしたのだが、あまり
にも体裁が立派で貫禄があり一瞬ためらってしまった。
“これはそんじょそこらの本とは違った大力作、軽くあしらうことまかりならん”
といった言葉が聞こえたように思った。
その声に、私はつい“ハハーッ、とりあえず読みまする”とひれ伏したのであった。
とはいっても、戦国時代の武将についてはよくテレビで映像化されて、なんとなく
わかってるし、“やーやー、我こそは…”の世界はかったるいし、こんな大長編、
面倒くさいし、斜め読みでいいや、と思った。
ところがである!
やっぱり司馬遼太郎はすごい。たちまち引き込まれてしまった。
西と東に分かれたこの天下の分け目の闘い、どちらの陣営に加担したら生き残れる
か戦国大名の思惑や生きざまがつぶさに描かれていた。
損得で動く者、義に動く者、器量の大きい者、思慮のない者、その人間模様たるや、
目が離せない。
陰謀策謀家で慎重な徳川家康と理知的行動派の石田三成の対比は、物事をやり遂げ
るノウハウに通じていて、実に示唆に富んでいる。
現代の実業家の愛読書となっているわけだ。
最後には、嫌われ者の三成だけどその美学は魅力的で、私はすっかり三成ファンに
なった。
そして、司馬遼太郎という作家の人間観察の鋭さに舌を巻き、気がつくと、私もい
っぱしの作家気取りで周囲の人間ウオッチングを始めていた。 |