●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん夫妻の安堵とスノボー金メダルの若者。


診察室にて


先週は夫のガン定期検診があった。

経過観察中なので3か月毎に検査しなければならず、再発があれば即入院となる。

夫が検査室に入ってだいぶ時が経過している。

付き添いの私はぼんやりと待合室のテレビを見ていた。

ちょうど、平昌の冬季パラリンピック、スノーボードの競技を放映中だった。

待合室なので音声はなく、そのかわり字幕が出ている。

画面は雪面を滑降中の選手が映っていたが、私の目には名も知らぬただも滑るひとで

しかない。

そのうち、大きく“金メダル成田緑夢”の字が出た。

ああ、日本人のようだ、でも、あの名前何と読むんだろう、あんなにスピードをだし

てどこに障害があるんだろう、と頭の中は?マークがたくさんついていた。

個人病院の待合室にはテレビを見ながら待つ患者が5〜6人いたが、金メダルに湧く

画面にも無反応で、皆静かであった。

まもなく、夫が出てきた。

私はすぐどうだった? と聞く。

過酷な検査の後のせいか夫は表情もなく、大丈夫そうだ、とひと言。

ホッとした。

帰ってから、夜のニュースで金メダル選手は“緑夢”と書いて“ぐりむ”と読むこと

を知った。

緑=グリーン、それに夢で“グリム”。

キラキラネームもここまできたかと言葉もなかった。


“緑夢”くん、昭和生まれの人間にはあまりにもまぶしい。


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