2/19のねこさん 文は田島薫
黒とらこっち向き
先週中ごろの晴れた午後、私ひとり自転車で食料買い出しに出かけた途中のねこよこ
ちょう入口角の家。庭をのぞくと、テラス手前の縁台に黒とらがいたんだけど、いつ
もは向こう向きでうずくまってずっとテラスの方を見てる風だったのが、きょうはこ
っち向いて寝そべってたもんで、私と目があった。こっちもちょっと自転車止め、よ、
って手を上げてあいさつして、ねこさんの顔を見てたら、ねこさんもこっち見てる。
げんきか〜?って言ってみたけど、ま〜な、って言ったような顔に見えたんで、私も
じゃな、って顔をしてからペダルを踏んだ。
ずっと、兄貴が出てくんのを見張ってるんだけど、なかなか出て来ないもんで、兄貴
に会えないまんま帰るのかなきょうも。兄貴、さみ〜のが苦手なんだよな、きっと、
ぼくもさみ〜のが好きなわけじゃないんだけど、こ〜して我慢して待ってるんだけど
な〜、しかし、ず〜と、あっちのせまい場所ばっかり見てるだけでなにがおもしろい、
ってぼくは思ってんのかな、あ〜、そっか、いつ兄貴が出てくんのかな、今かな、今
かな、って思ってっから長い時間過ごせんだね、きっと、しかし、一んちじゅうただ
なにも起こらないのを見てるだけ、ってのは無駄な時間の過ごし方かもな〜、それに、
まだかまだか、って待ってるより、別なこと考えたりしてて、ふいに、お、兄貴、出
て来たのか、って方がいいかもな、じゃ、たまにゃ、こっちの広い方も向いてみっか
ね、お、いつものあやし〜あいつが手〜あげてるね、はいはい、こんちは。