映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、好きな作品のより深いところを見ようとしてるようです。
映画もヘビロテ
6月から準備に参加した映画祭が11月3日に終わり、やっと映画を観られる状況になった。
毎年120〜150本ほど観るのだけど、今年は今の時点で100本。一か月半であと20本なら
観られるかもしれない。
などと書きつつ、最近つくづく思うことがある。沢山の映画を観ることよりも、本当に良
いと思う作品を繰り返し観る方が良いのではないか…。その映画のリズムを体で覚えるほ
どヘビロテする。シーケンスやカットの数を数え、演者の向きや動きを目に焼き付け、セ
リフや効果音、音楽を耳に焼き付ける。画面の片隅にさり気なく置かれている小道具の役
割にも注意しながら。そんな風にガッツリ一つの作品と向き合うことが、100本の映画を
観るより勉強になると思うのだ。
では、どの映画を選べば良いだろう。おそらく映画通なら多くが『市民ケーン』を選ぶだ
ろう。パンフォーカス、縦の構図、カメラの動き、小道具の使い方…。監督のオーソン・
ウェルズの作品を全て繰り返し観るのもいい。ヒッチコックは一本を選べない監督だ。ど
の作品も(失敗作ですら)研究したいぐらい、映画作りのお手本がてんこ盛り。
そんな誰もが認める巨匠の映画はさて置いて、個人的に何を繰り返し観たいか考えてみた。
うーん、『ガタカ』かな。遺伝子操作により生まれたハイスペックな「適正者」と自然妊
娠で生まれた「不適正者」が存在する未来の話。ジャンルとしてはSFだけど、極めて人
間的なドラマだった。映像は美しく、残酷なほど無機質なデザイン性、生命倫理を迫る宗
教的テーマ、重厚且つ繊細な音楽等々。決して明るい余韻の残るものではなかったけれど、
繰り返し観て細部を研究したくなるなる作品だった。
それにしても観たい映画が山ほどあるのも事実。130本いっちゃおうかな。
1997年/アメリカ/106分
監督 : アンドリュー・ニコル
音楽 : マイケル・ナイマン
出演 : イーサン・ホーク、ジュ―ド・ロウ、ユマ・サーマン