●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの知的好奇心は止められないようです。



Shall we 俳句? その1


ある日、お使いの帰りに町の本屋で立ち読みしていたら店の主人が手招きをする。行く

と、俳句仲間募集と書いたチラシを見せて「入りませんか? 初めは見学だけでもいい

ですよ」と誘う。

この本屋は我が町唯一の本屋で代々続く老舗である。老舗と言っても御多分に漏れず今

どきの町の本屋の経営は青息吐息らしい。

2階建てのボロ屋は改築されず、間口は広いが奥行きが狭く、店先に平積みの雑誌が並

ぶ、昔ながらの雑然とした店構えで頑張っている。

この店のいいところはで立ち読み自由なこと。

店主は小太りで眼鏡をかけ、いつもせかせかしているのだが、さすがに顔はひきしまっ

ている。なんでも、横浜名門校卒業の秀才だとか。

その店主が熱心に説明するには、

親友の横浜国大の教授が『俳句実践講義』という学生向け俳句指導書を出版したが売れ

ないので、店の2階で俳句教室を開き、入会者の教科書にしようと考えたのだという。

だから、入会条件はこの本を購入すること。

な〜んだ、販促のツールだったのかと思ったが、手の内すべて話す店主の正直さに好感

をもった。

「スタートしたばかりだから、皆同じレベルで安心ですよ」

と後押しされ、私はう〜ん、と考え、月に1回だし、近所だし、なんだか面白そう、と

入会を決めた。

何を始めるのも敷居が低く、深く考えることなくその世界に入ってしまう私。入ってか

らその奥深さに慌てふためき四苦八苦する私。

いつものことだが、どうやらその癖はまったく変わることなく、墓場まで持っていくら

しい。

帰って夫に報告すると、

「まったく、どれもモノにならずに気が多いんだから・・・」と呆れ顔。

「好奇心が旺盛といってほしいわ」とちょっと反論。

かくして俳句入門となった。               (つづく)


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