●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、シンプルな芸術論に一理を感じたようです。



ある絵の講師の話


この間、僕のケータイが壊れちゃってね、店に持って行ったんだ。そしたら職業は? 

って聞くから、無職、って答えたら、それではだめです、っていうんだな。それで、

自分の苗字をつけて○○商店って言ったら、何を売ってるんですか? と聞くから、

絵です、って一応言ってみた。ホントは絵なんかほとんど売れないんだけどね。

じゃ、画家なんですね、って店員が困ったような顔をして言ったよ。

僕も店員も、果たして画家って職業なんだろうか? と悩んじゃうわけだ。

食うための画家は職業画家で芸術とは異なる。

皆さんはそんなの目指しているわけじゃないよね。 

ところで、一流の画家になるにはオリジナリティをもたなきゃダメだね。

シャガールをみよ、ゴッホをみよ、モジリアニをみよ。一目でその人の作品と分かる

じゃないか。

芸術家はオリジナリティの塊みたいなものなんだ。

自分らしさを作品に盛り込むんだな。

トランプさんがアメリカファーストで小池さんが都民ファーストなら芸術家は自分

ファーストだ。

自分ファーストの人とつきあってごらん。例えば、水玉模様の絵を描く草間彌生さん

と付き合ったとしたら1時間とは一緒にいられないと思うよ。

芸術家はそのくらい特異性があっていいんだよ。

絵を見て、「上手な絵ですね」って言われたらダメで、「おもしろい絵ですね」って

言われたら喜びなさい。

それからね。街中を歩いていて、人の銅像が立っていたら立ち止まってしげしげと見

るかい? 見ないだろ。みんな当然といった顔して通り過ぎるじゃないか。

なぜか?

立体の人物を立体で表現してるからだ。これが絵だったらきっと皆立ち止まって見る

と思うよ。それは立体を平面で表しているからだ。

つまり人は意外性に驚くんだな。

いま、流行りのピコ太郎っているだろ。ヒョウ柄の服着て顔だけ見てりゃ、あれはや

くざのチンピラの顔だよ。

そのチンピラがすごむどころか、アッポロペンといってヘラヘラ踊るんだからびっく

りするんだな。それでみんなが喜ぶんだ。

とりあえず、自由に描こう。それが思想だ。

何が描きたいかを決めよう。それが意志だ。


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