白い月
朝の7時頃、新聞を取りに庭にでた。
すばらしい秋晴れだ。
東の空からオレンジ色の朝日が斜めにさして、まるで舞台照明のように庭木を立体的
に立ち上がらせている。光と影がくっきりと対比して、日中は平板に見える庭がぐん
と奥深いものになっている。
空気はひんやりと冷たく、深呼吸をすると湿りけのある空気で草の匂いがした。
全身に光を受けていたらまぶしくなり、くるりと後ろを振り向き頭上に広がる澄んだ
青空を見あげる。
あ! と西の空に思いもかけないものを発見した。
白い月である。名残の月だ。
形は半月、欠けている部分はすでに朧になっていていかにも儚げである。夜の煌々と
射るような光を放っていた月からは想像もできない、今にも消え入りそうなやさしい
月であった。
不意をつかれたように私は体の中に静かな興奮が湧きおこった。
月というものは昔から見る者の気持ちを受け止める不思議な力があるという。
私は昨日、久し振りに友人に会い、いまだ気持ちの高ぶりを引きずっていたのだった。
何事にも一言呈しないと気が済まない突っ張りの性格が相手の気を悪くさせたのでは
ないかとくよくよ悔やんでいた。
もっと相手の立場になって考えねば・・・
白い月は今かろうじて空にとどまっているけれど、やがて昇る太陽の光に呑みこまれ
あの青い空の中に消え入ってしまう。だが、夜になれば再び煌々と光を放つのだ。
何事もなるようになって終わりを迎え、また時間が巡れば新しい始まりがあるという
大いなる摂理の穏やかさ。
朝日に輝く庭の中で、光と影と白い月、何やらドラマチックな朝のひとときに、
私はいつのまにか広い気持ちになって自然の営みをそして人の営みを愛おしく受け入
れていた。
そして、変わらぬ一日が始まる。
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