●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんが、地元横浜住民を地域別に総括。



シリーズ 街角感傷

横浜


横浜は私の縄張りといっていい。

結婚して横浜市に住んで以来、買い物、娯楽、カルチャー、乗り換えなど、とにかく横

浜駅をずいぶん利用してきた。

そしてなんといってもミニコミ誌のリポーターになってからは横浜駅周辺が仕事場なの

だった。

横浜駅はJR、地下鉄、そして私鉄3社が通っていて、一つの駅に乗り入れている鉄道会

社の数としては最多の駅だ。従って乗降客数も全国ランキング堂々の5位。

一昔前、広告媒体としてミニコミ誌が主流だった頃、横浜の広告代理店はこぞって横浜

駅から伸びる私鉄の相鉄線、京急線、東急線に記事型広告を載せるフリーペーパーをば

らまいた。

その広告の反響はどうかというと、各線によって異なり、その地域性、住民性、が大き

く関係した。それは街の成り立ちを見るとわかる。

相鉄線は昔、ジャリ鉄と呼ばれ、相模川の砂利を運んだ鉄道である。

それが今や団地・マンションが並ぶ浜っ子のベッドタウンだ。だが、沿線には所々田園・

丘陵地帯が連なり牧歌的な雰囲気も残っていて、そのまま住む人に影響し純朴な印象だ

った。勢い広告も記事も生活密着型になった。

東急線はコンツェルンが開発した私鉄で、渋沢栄一の提唱による田園都市などの高級住

宅街が計画的につくられ、日吉の慶応大学、元住吉の法政大学などがあり、ちょっとお

高いようなすました顔を持つ。フリーペーパーに対するノリも悪かった。

京急線には川崎大師の存在が欠かせない。参拝客の足として開業したからだ。町の雰囲

気は下町的で気っぷがいい。また沿線に京浜工業地帯を通り工場を持ち、景気も良かっ

た。もっともスポンサーもつきやすく、読者の反響も早かった。

以上は私鉄各線の大雑把な印象なのだけれど、地域とはとりまく環境や歴史に左右され、

その個性は自然発生的に育っていくのがわかって興味深い。

それは人にも当てはまることなのだろう。


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