●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、日常の喜びを実感しました。
今日何食べよう…
自宅と病院を往復する生活も終わり、元の生活に戻ることができた。
張り切って買い物にいくと、八百屋の店先に新ジャガだの新タマネギだのが並び、あ
あ、春だなあ、と実感する。
見渡せば、ウドもあるし、スナップエンドウもある。
今日、何食べよう…そんなことを考える感覚も楽しい。
迷うことなく、新タマネギをスライスして削り節とドレッシングで、新ジャガはベー
コンと炒めてトマト煮に、などと素早く献立が決まった。
献立がすぐ決まる日は料理への意欲も高まるときだ。
忙しいときも悲しいときも作りたくないときも、人はやっぱり食べる。食べることで
事態を変えようとするときもあるし、気持ちを癒そうとすることもある。実際、健全
な証拠なのか感情とは別にお腹は減るのだ。
なにかドタバタしているときや何も手につかないときも、「とりあえず、ごはん」と
いえば、物事は前進する。
私は悲しいときや落ち着かないときはスープにする。一番は具だくさんみそ汁。
他には、やはり具だくさんをミキサーにかけてトマト味、中華味、ポタージュ味でつ
くる。
嬉しいときはなんでもおいしく食べるけど、なぜか突然、体が要求するものがあって、
それがなんと甘酒なのだ。
母が好きだったので、子供の頃から馴染んでいたからだろうか。豊かな酒の香りが立
ちのぼり、糀のねっとりさとほんのりした甘酸っぱみに加えて、すりおろした生姜が
味を引き締めて・・・
再び主婦という繰り返しの雑事に追われる日々が始まった。
でも、誰かが言っていた。幸せはささやかなるが極上、と。