●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、かつて社長から遊び法を教わりました。



タモリとたけし


最近よく「ブラタモリ」というテレビ番組を見る。

なかなか切り口がユニークで興味をそそられる。

タモリは長寿番組「笑っていいとも」が終わったと思ったら、こうした畑違いの番組に

出るようになった。いや畑違いというより、きっと以前から地図やら地形やらに興味を

持ち続けていたのだろう。


タモリといえば、すぐビートたけしが思い浮かぶ。

一世を風靡したコメディアンの両雄だ。

だいぶ前になるが、私がコピーライターをしていた頃、所属していた広告代理店の社長

がなんでも面白がってイベント化してしまう人だった。

ある日会社に行くと、事務所の壁に大きな紙が貼ってあり、中央の線を境に右にタモリ

派、左にたけし派と書かれ、“この事務所へ訪れた者は必ず好みの方に丸をつけること”

と朱書きしてあった。

見ると、丸の数は両雄拮抗していたようだったが、わずかタモリの方が多かった。わた

しはしばらく考え、漫才のたけしよりもタモリの方がいいかなとタモリに丸を入れた。

結果が出たからって、どうするわけでもないのだが、みんなでワイワイと人気投票を楽

しみ、真剣に無頼派たけしだの、知性派タモリだのとひとくさりそれぞれのうんちくを

傾けていた。

この会社は年中こんなミーハーなことをしていた。だれもくだらないなどとは言わない。

また宴会をすればしたで必ずかくし芸をさせられる。そのために手品や物まねや踊りな

どを仕込んだ者もいたが、芸のない者は、女装してごまかす者もいて、いつも大変など

んちゃん騒ぎだった。

お蔭でくだらないことにも大袈裟に真剣に反応する心はコピーライターにも大切な資質

であることを学んだ。

その証拠にタモリもたけしも型にはまらなかった活躍で本物の花を咲かせたではないか。


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