気着

●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、たまった年賀状で時代や人について考えました。



年賀状の整理


“断捨離”という言葉がすっかり定着している。あまり好きではないが、このくらい

きっぱり言わないと愛着あるものなどは整理できないのであろう。

物を溜めておくという行為は、将来まだ自分は生きていて精神も肉体も今と同じ状態

を保っている、という前提がある。

健康状態や心境変化が起これば捨てる行為は簡単である。

さて、私は昔から手紙とか書き物はなかなか捨てられない質で、気が付くと大きめの

菓子箱を代用した年賀状入れに10年以上の年賀状がたまっていた。

遅ればせながら最近処分しようと決心したものの、つい年賀状に見入ってしまい作業

がなかなかはかどらないのだ。

昔の年賀状は、賀詞をのべた印刷文字以外に、版画や切り絵などの絵を添えたり、一

年の決意を述べた言葉が入っていたりして、それぞれかなり力が入っていた。

元旦を、今までの状況をリセットして気持ちを新たにするスタート地点としての特別

な日としているのがひしひしと感じる。

干支を掘ったゴム版とか本格的な版画とか、筆による手書きの賀詞とか座右の銘のよ

うなものがあったりで、個性豊かで見ていて非常に楽しい。

すでに他界した人のや新しい境地を開いた人のものには思わず手が止まる。

それにしても感じることはここ数年のパソコンや携帯電話の普及で書き物の様子の変

化である。

年賀状ひとつ見ていても人間の心の在りようの変化が一目瞭然で、世相が変わるのも

致し方がないのだろう。

因みに我が家の今年のお年玉年賀はがきは3枚ほど切手シートの3等に当選した。1

年のツキを占うこのささやかな招福感は変わらない。


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