●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、主婦のアルバイト事情を考察。



行列のできる八百屋


私は時間のあるときは、すべての食材をスーパーだけで済まさず、地元の小売店でも買う。

魚屋はとっくに無くなってしまったが、肉屋、八百屋は健在で、消費税が上がってからは

むしろ前より繁盛しているようだ。

肉屋は産地直送の山形牛とやまゆりポークがウリで、量り売りをしている。注文のグラム

数よりもちょっぴりおまけしてくれるのも嬉しい。

八百屋は付近の地主で家作をいくつか持っているお金持ちだが、50代の夫婦がアルバイ

トを二人雇って切り盛りしている。

広い間口に所狭しと普段使いの果物や野菜が豊富に並び、地元の横浜ブランドも扱ってい

て安くて新鮮である。時には行列ができて、2台のレジがフル稼働。夕方行くとほとんど

売り切れということがあるほどの繁盛ぶりだ。

先日のこと。きっとお客が増えて人手が足りないのだろう、その八百屋に求人の貼紙がし

てあった。いわく

「パート店員募集。時給1050円。勤務時間帯については面談の上」

私は八百屋の時給がかなり高いのに驚いた。1000円を超えるとは! つい最近までパ

ート店員の時給は800円代を推移していたような気がする。 

世の中やっぱり景気は上向きなのだろうか…


昔、「103万円の壁」というのがあった。妻の年収が103万円を超えると配偶者控除

が受けられなくなり、世帯で負担する税金が一気に増えて手取りが減る逆転現象がおこっ

た。その後配偶者特別控除が導入され、妻の収入が141万円で夫の所得から税制面では

控除されなくなり、130万で夫の被扶養者からはずれ、社会保険料など妻自身が払わな

ければならず、新たな「130万の壁」ができたのだった。

そういえば、子育てに一段落した40代の頃、私の周りの友人たちは働きたくてうずうず

していた。ところが、就職口の少なさや保育所の問題でフルタイムは無理なので、パート

タイマーを選ぶしかない。そのときの合言葉が「130万円を超えてはダメよ」というも

のであった。

そして今、安倍政権で配偶者控除の見直しが議論されているという。もっともである。控

除の対象外になることで収入の逆転現象を心配して働くのでは、やりたいことを心ゆくま

でできない。女性の働く環境の改善を速やかにしてほしい。


2日後、あの行列のできる八百屋へ行った時、貼紙はすでになくパート店員は決まったら

しい。

そして、まもなく二人の主婦らしい新顔のパートさんが交代で働くようになった。二人と

いうことはやはり、「130万の壁」を気にしてのことだろうか。


戻る