6/16のねこさん 文は田島薫
黄とらマボロシを見る
暑く晴れた週末の午後、家人と自転車で食料の買い出しに行く途中のねこよこちょう入
口角の家。シックが死んだ後、庭をのぞいても、いるはずの黄とらはたいてい家にこも
ったままの日が続いてたんだけど、きょうはめずらしくテラスの前の地面に下りて座っ
ていた。われわれは、よ、おいおい、って手を上げて合図してみたら、こっち見てから、
黄とらこっちへ歩いて来た。お、来たか〜、って思ってるまもなくすぐそばの家の壁に
くっつけてある縁台の下の日陰にもぐりこんでからそっぽを向いた。
外出ると暑っちくて家ん中にいる方が涼しくていいんで、中から台の上見張ってるんだ
けど、やっぱり、ためじろーは来なくなっちゃったんだな〜、でも外出ないと、ぼくが
いることがわかんないで帰っちゃったかもしんない、ってとこもあっから、そのせいも
あんのかもな〜、おし、きょうは、暑っち〜けどがまんして外出てやっか。
よし、この台の下にいる方が外から来たためじろーにはわかりやすいかもしんないな、
このまんなかで、こ〜、座って、これでどだっ、ん〜ん、陽がたっぷりぼくの体に当っ
てんね〜、ん〜ん、なんだか、頭がぼーっとしてきちゃったね〜、あり、向こうで手ふ
ってるのがいるね〜、ためじろーかな?って思わず足がそっちへとととと、って行って
から、横の涼しそうなとこへ、ととととと。今のはなんだったんだ、だいたい、ためじ
ろーは、手えふったっけかな、ど〜だったんだろ〜、ん〜ん、思い出せない。