3/3のねこさん 文は田島薫
知らんぷりねこさん
先週の金曜の午後、家人と長野の旧い商店街を歩いてて、ちょっとよこの路地に入ったと
ころ、車がはじっこに1台あったかなかったか、ってようなけっこう広い駐車場があって、
そこに頭と背中が黒いねこさんがいた。われわれが、お、とか、よ、とか言ってるのに、
後ろ向きのまま知らんぷりしている。ほとんどすぐそばまで行ってからまた話しかけると、
ちょっとこっちを向いてすぐ目をそらし、あくびや伸びのまねしてから、またこっちを向
き、じゃ、ってこっちが手をのばそうとすると、ビクッとして向こうへ歩き出し、そのま
まふり返らず行っちゃった。
や〜、いつも気持ちい〜んだよね〜この広場、ポカポカ陽があたってあったかいし、ん?
ま、きょうはそんなにあったかくないよ〜だけど。とにかく、こ〜、ぼくのヒミツの場所
を、のんびり歩いてる、って〜と後ろからだれかがぼくになんか言ってるよ〜だね、また、
なんだかいろんなこと言ってぼくをなでたりなんかする連中かもしんないね〜、めんど〜
だからほっとくか、しりませんよ〜、だ、聞こえませんよ〜、つってると、すぐそばまで
来ちゃってるよ〜だから、そろそろ退散すっか、すぐに逃げちゃうのもかっくわり〜から、
ゆっくりと、おっと、やばいっ、思わず、びっくり、びっくりしたけど、平気なそぶりで、
ゆっくりあっちへ行くぼく。