●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、精神にも負荷をかける利点に気づきました。



大いに傷つこう


私は同人誌に属している。

その同人誌は年に数回発行し、会員でなくても読んだ人なら誰でもが参加できる合評会

を開く。

そのときの批評がすさまじい。

とにかく褒めあげる人は稀で、必ず欠点を探し出し、ここはよくないと指摘する。それ

が嘘のない批評であり、いかに貶すかが読み巧者と評価される雰囲気なのだ。

また合評会は批評者の技量を問われる場なのでもある。ときには作者よりも深く掘り下

げて作品の問題点を浮き彫りにすることがある。

合評会で作者は散々叩かれるが、2次会では酒を飲みながら和気藹々とみんなから成果

への賛辞が惜しみなく与えられて作者は救われるのが通例だ。


ところで、今の社会、褒めあうことばかりが蔓延しているような気がする。子供の教育

現場でも“褒めて育てる”が鉄則だし、メールで事を済ます大人社会でも無難な褒め言

葉が飛び交う。

そうしないと、子供は親身な注意を怒られたと過剰に反応しショックを受け自信を失い、

大人でも貶されると自分が否定されたと心を閉ざしてしまうのだ。

むやみに褒められ続けると進歩がない。人に傷つけられてはじめて教えられる事柄とい

うのはかなりあるからだ。

当人が貶されたとか、傷つけられたとか感じる言葉には多くの本質が隠されている。

極論すれば、この世で生きていくこと自体、人と人との絶え間ない傷つけあいではない

だろうか。

その傷からこそ多くのものを学ぶことができる。

そのことを私は合評会から学んだ。

            (1月12日まで冬休みをいただきます。皆様良いお年をお迎えください)


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