●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、地元と世界のあり様に思いを巡らしながら歩きました。
投票散歩
投票日、青空が広がる冬晴れだった。
朝食後、2階のベランダに布団を干したらぐずぐずせずにすぐ行こうと思った。
冬は女にとって好都合で、ノーメークのまま普段着にコートをひっかけ帽子とマスクをかけ
れば身元不詳となってすぐ出かけられる。
外へ一歩出ると思いもかけない冷たさだった。手袋をしてくればよかったと思ったが、その
まま投票所である小学校への坂道を歩いていくと、溢れるほどの光を浴びて温かくなり気持
ちが晴れ晴れとしてきた。
何事も思い通りに運ばない日常だけど、ま、いいか、と、心に折り合いをつける自分がいる。
坂を上りきると校舎横のプールの水色のペンキに塗られたブロック塀に突き当たり、塀に沿
って植えられたドウダンツツジが鮮やかに紅葉していた。
ひっそりとしたプールをぐるりと回り、正門のある通りへでるとすでに人通りがあった。
10時前なのに出足が早い。
愛想のいい選挙管理職員に誘導されて無事投票を済ませると、帰りは別の道を通って帰るこ
とにした。
広い運動場を突っ切って、細い通学路にでると隣は一面柘植などの売り物用の植木が植えら
れている。この辺りは地域一の地主さんの所有地である。
立ち止まって、何も遮るものもなく眩しいほどの太陽を浴びて手をかざして遠くをのぞむ。
ここは富士塚という地名が示すように昔は富士山はもちろん、丹沢の山々が望めたのであっ
た。ところが対するもう一つの台地に家が建てこんで、富士山は見られなくなってしまった。
よく目を凝らすとぎっしり家が建つ遠く向うに、遙か丹沢の山並みが…と思いきや、白く光
る雲の峰であった。
すっきり澄み渡った青空に光を浴びて家々が輝いている風景は平和でとても穏やかだ。
ゆっくり坂道を下りながら、今、投票をしてきた政党や議員が、これからも平和で希望のも
てる社会を作っていくことを念じたのだった。