11/4のねこさん 文は田島薫
屋根の上のねこさん
先週の中ごろ、家人の父親がいる老人ホームへ行こうと、家人とふたりでローカル線の
小さな駅のプラットホームの古いベンチに座ってると、線路の向こうのフェンスのそば
にある家の瓦屋根の上に乳牛柄のねこさんが歩いていた。よ、って呼びかけると、ねこ
さん、歩を止めてこっちをじっと見つめながら固まっている。われわれは、さらに、何
度か手をあげて、よ、って言ったけど、ねこさんは固まったまま。おもしろいんで、こ
っちもじっと見てたんだけど、少し飽きたんで、ふたりちょっと目をそらして別の話を
してたら、目のすみにねこさんが動き出すのが見えたんで、お、って言いながらふたり、
ねこさんが屋根の尾根をまたいで向こう側に歩いて行くのを見送った。
平べったい石がきれいに並んだこの高い場所を歩くのがぼか〜好きなんだよな〜、きょ
うは石の暖ったかさがちょ〜どい〜ね〜、だから、こ〜、ゆっくりと、それを足の裏で
楽しみながら歩くんだね〜、静かに石さんとお話してる、って感じだね、ね〜、石さん、
よっ、よっ、って?ん?なんだ〜、石さんかと思ったらあっちの怪しい2人組が言って
たのか〜、なんだってんだ、このぼくらの話のじゃますんのは、なにか、大事な用でも
あんのか〜?おいっ、あんなら言ってみてみろっ、ん? なんだい、手上げて、よ、よ、
って、言ってるだけじゃんか。なんだい、ただのバカなのか〜、聞いてやって損した。
も〜、行こ行こ、あっち行こ。