●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの心は、伴侶の心配でいっぱいのようです。
ああ、疲れた・・・
とぼとぼと歩いていた。
足元の枯葉がひんやりとした秋風に吹かれてぱらぱらと転がっていく。
いつのまにか新横浜の街路樹の欅も、病院を囲む桜も秋の錦に色づき始めていたのだった。
なんだか、秋が他人事のよう過ぎていく。
10月下旬、夫が大腸ポリープを内視鏡で切除するため入院した。
血液の流れを良くするワーファリンという薬を飲んでいたため10日間の入院予定であった。
大腸ポリープを取るのは比較的ポピュラーな手術らしい。
人に言うと、私もやった、という人が結構いて、健康診断でわかりその場で切り取った、とか、
内視鏡手術なので簡単で日帰り手術だった、などと言う。
それでたかをくくって臨んだ手術なのに、3日後ポリープ切除痕から出血があって大幅に退院
が遅れた。
病院通いも疲れるが、やはり点滴を離せず顔色の悪い夫の姿を見るのは気が沈む。順調に治る
のだろうか、元の生活に戻れるのだろうか、といった気疲れもある。
私の脳は、もしこうなったら、ああなったらとあらゆる面を想定して、過度に自衛本能が働き
常に緊張して身構えているようだ。
始めは、亭主は病院で静養、私は気ままな一人暮らしを満喫しようと思った意志に反して、気
持ちがどんどん落ち込んでいった。
家に帰ると新聞がそのままテーブルにあり、椅子が中途半端にひいたままの形で静まり返って
いる。
たまらなかった。自分のために料理をする気にもならない。
外から帰るとすぐテレビをつける。音が欲しい。
私は、暇さえあればゴロゴロとして体を休めている。