目病み女
朝、顔を洗って鏡を見たら右目が真っ赤に充血していた。
あーやっぱり、と思う。心当たりがあったのだ。
お盆休み前、夫がスポーツクラブのプールでうつったらしく、結膜炎になり、同時に
38・2度という高熱が出て1週間寝込んでいたから。
赤い目というものは鬼気迫るもので、さながらド迫力の赤目お化けで、夏の定番怪談話
に出てくるようであった。
「おー、こわっ!」と思いながら、私は絶対うつるまいと気をつけていたのに2週間後、
ついに結膜炎がうつってしまったのだ。ここのところ、暑くてバテ気味なのに旅行やら
太極拳の講習やらといろいろスケジュールいれちゃったしなあ〜と反省しきり。
すぐに眼科へ行った。目の検査のあと、とっつきにくい感じの女医さんが
「風邪をひいていませんか?」と聞く。
「朝熱っぽいので測ったら37度ありました」と答えると、その女医さんはやおら自分
にマスクをつけ、ちょっと咎めるように説明する。それによると、これはアデノウイル
スによる結膜炎で特効薬はないとのこと、抗生物質の点眼薬をさして、家に居て体を休
めるようにということだった。
今年新しく買ったサングラスをかけ粋がっていた私は、夏のファッションとは裏腹にト
ボトボと家に帰った。
2日後には、赤目は左目にも及び、両目が開きにくいほどひどくなり、これは只事では
ないとうろたえた。
昔から「目病み女に風邪ひき男」という言葉があって、イイ女とイイ男の代表のように
言われているが、いくらなんでも両目じゃねえ・・・
お岩さんも片目だから怖いなかにも色っぽさもあるのであって、両方塞がっては三味線
持って歌い歩く瞽女である。それにうつるとあっては外にも出られない。
感染させた張本人の夫はもうけろっとしていて、「二目と見られないその顔じゃ、ぞっ
として節電対策十分だ」と自分のことは棚にあげて、悪態をつくのであった。 |