二人のばあちゃん
私の両親の実家は千葉県の下総松崎にある。
2軒とも100メートルと離れていないご近所で、つまり両親は幼馴染同士で結婚した
ということだ。
それで私はかなり小さい頃から、毎年夏休みを両親の実家に一人で長逗留をした。そこ
には従姉妹や近所の子供がたくさんいて、山や川などを遊び場に、野性児のようなそれ
はそれは楽しい時を過ごした。
行くときは両親から平等に泊まるように言い含められていた。例えば、父方に3泊した
ら、母方にも3泊するようにと。
2軒の実家にはそれぞれおばあさんがいた。父方の方はワカばあちゃん、母方の方をケ
イばあちゃんと呼んだ。
ワカばあちゃんの家は3世代同居の大世帯なので、一日のスケジュールが決まっていて、
朝6時起床、廊下拭きや庭掃除は朝食前の子供の仕事で、従姉妹たちとみんなでやった。
涼しいうちに勉強をすることも日課であった。
ワカばあちゃんは世話焼きでよく気がつきちょっと口うるさいところもあるので子供の
目からは先生のようだった。
ケイばあちゃんは何事にもおおらかで、子供をからかっては笑っている気のおけない人
だった。井戸が遠かったので水汲みだけがお手伝いで、涼しいし、スイカが冷やしてあ
ったりするので楽しい仕事である。
ワカばあちゃんの口癖は「ほれほれほれ」でケイばあちゃんの口癖は「おやおやおや」
なのだった。
私はワカばあちゃんの家からケイばあちゃんの方へお泊りを移動するときはいまでもホ
ッとしたのを覚えている。やはり泊まったことのある姉たちにそのことをいうと異口同
音にワカばあちゃんはちょっと煙たくてケイばあちゃんの方が気楽でいいという。
たぶん人間は立派さよりも気安さの方が居心地がいいのであろう。人の評価というもの
はとかく頭で考えて決めるよりも情で決めるものだと今になってつくづく思う。
(一葉もどきはこれより1月14日まで冬休みをいただきます。皆様、良いお年を!) |