●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの新シリーズ3回め。ありがちな当人無自覚なおせっかい。
シリーズ 人間模様
うわさ話
「ねえ、聞いてよ、C子さんたらね…」
と主婦仲間のD子さんが私に耳打ちをする。
話はこうだ。
「C子さんのお母さんが最近脳梗塞で倒れたそうよ。幸い、命はとりとめたんだけど、半
身不随となり介護が必要となったらしいの。だけどC子さんたらお金になる他人の介護を
優先させて自分の親の面倒をみないのよ。おかしな話だと思わない?」
思いません、そんなの個人の勝手じゃん、と私はいいたい。
C子さんは介護士の資格をもっていて、週に4日ほどお年寄りのグループホームでヘルパ
ーとして働いている。勤務はお年寄りの食事や入浴の世話から話相手まで多忙な日々であ
る。母親の介護より仕事を優先させたらしい。
D子さんはなおも言い募る。
「C子さんは一人娘なのよ。母親の面倒を見なければならない立場じゃないの。それにお
母さんの家はそれほど遠くないし。通って面倒をみるべきだと思うわ。私なんか、さんざ
ん苦労したけど夫の両親を介護して最期まで看取ったのよ。C子さんのお母さんにしてみ
りゃ実の娘に面倒を見てもらいたいでしょうにね。肉親だもの、それって人の道にそれる
わよね」
人の道をもちだすほどのことではないのにと思う。それぞれの家庭の事情というものがあ
るんだし、他人がとやかく言う問題ではないのに…
C子さんには経済的理由があったかのかもしれないし、母親はそれほど経済的に困ってな
く、ヘルパーを頼んで十分生活できると判断したのかもしれない。C子さんの仕事柄、せ
っかく介護制度という進歩した行政があるのだからフルに活用しようと考えるのも当然だ。
私はD子さんのように自分の経験をもとに正義をふりかざす人はちょっと嫌だなと思った。