1/16の日記          文は田島薫

もう1週間いることに

正月ももう終わりのような半ばの日にさいたまに帰る予定にしてたんだけど、おふくろ

は自転車に乗って買い物行ったり家事もできて元気なものの朝少し腹痛があり、それも

健康食品や治療薬などで改善して来て、おふくろ自身ももう大丈夫だ、って言うものの

念のため、迎えに来てくれるといういとこにも伝えてもう1週間伸ばすことにした。


そんなことを決めた翌日の土曜日の午前中、廊下のガラス越しに色黒のがっしりした老

人がネギの束持って入って来るのが見えたんでガラス戸を開けてよく見てみると、近所

にいる親父のいとこのタツオさんだった。こんにちわ、って言うと、こんにちわ、って

応え、久しぶりです、って言うと、久しぶり、って応えた。人つき合いのわるい親父は

親戚とのそれもわるく、毎年盆暮れに帰ってた私も、タツオさんに最後に会ったのがも

う20年ぐらい前になりそうだった。タツオさんは親父に線香をあげると、コタツに一

緒に入り、自分の子供や孫たちといっしょの生活を、しあわせだ、って言った。人づき

あいがわるく友人もほとんど見当たらない親父のことを、友だちが多すぎるぐらいだっ

て言うタツオさんとくらべたおふくろが、少し親父を批判的に見るようなことを言うと、

人それぞれのやり方があるんだから、それはそれでいいんだよ、って言った。私もその

通りだ、って思いそう言った。


元の予定ならばたばた帰らないといけなかった翌日曜日は、いつも通りにのったりと過

ごした。おふくろ主導のテレビ番組を時々のぞいたりしながら、ギターでドラマのテー

マをなぞったり、クリームのクロスロードのアドリブコピーや戦場のメリークリスマス

を弾き、新聞を読み、インターネットで松岡正剛さんの図書案内を読んで読書不足のフ

ォローをし、その場運動をし、物思いしながらビールを飲んだ。




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