はとバスツアー漫遊記 その1
高校クラス会を東京見物のはとバスツアーにしようと言ったのはS君だった。
都内の高校だから東京育ちなんだけど、“東京の田舎っぺもいがっぺ”と幹事一同が賛
成した。
というわけで、秋も終わろうとする11月の下旬、2年ぶりの高校クラス会が決行され
た。決行されたというほど大層なものではないけれど、コースは皇居前広場、六本木ヒ
ルズ、隅田川遊覧船にて浅草観音と仲見世へと盛りだくさん。ぽかぽか陽気の小春日和
のもと集合場所の東京駅を出発したのは10時30分だった。
あっというまに皇居前広場に到着。旗を持ったうら若いガイドさんの後をにわか仕立て
の団体が4〜50人がぞろぞろついて行く。ちょっと恥ずかしい。
坂下門や二重橋を眺めたり、写真を撮ったりでまるっきりおのぼりさんそのもの。でも
皇居前広場に立つと、枝振りのいい松の木々が厳粛な気分に、そして広い空がせいせい
した気分にさせてくれる。
「ねえ、テレビでよく見る玉音放送シーンでは、この広場に大勢が集まり天皇のために
正座して泣くのよね。」
Mさんは思いついたように私に言う。
「そ、ほらあそこはGHQ本部の旧第一生命よ」
私は反対側を指差す。
「やだ、終戦を連想するなんて私たちやっぱり歳だわねえ」と笑い合った。私たちは人
間天皇を受け入れた世代ではあるが、戦争で神格化された天皇の恐さも聞いている世代
でもある。
またぞろぞろ移動して皇居外苑へ。お目当ては楠木正成の騎馬像である。
「皆さーん、東京の三大銅像をご存知ですか? この楠木正成像と靖国神社の大村益次
郎像と上野公園の西郷隆盛像が三大銅像でございまーす」
というガイド嬢の説明にみんなの視線はいっせいに銅像を見上げる。
私はなぜここに楠木正成がいるのか不思議に思ったが、別に説明板を読むでもなく、抜
けるように青い空にみとれた。 |