自己紹介
電車に乗って座っていたときのこと。
途中の駅で3人の中年の男女が賑やかに乗ってきた。2人の男性は黒のフォーマルスーツ
に白ネクタイ、女性はレースのブラウスにアイボリースーツ。それぞれ手には大きな紙袋
や花を持っている。
明らかに結婚式の帰りだ。
ああ、秋は結婚シーズン。おまけに今日は大安の土曜日。
3人は私の座席の前に立つと、上機嫌で話し始めた。私は思わず聞くともなしに聞いてし
まった。
女性
「ねえ、ほら、式の前に親族の紹介っていうのがあったでしょ。両家が向かい合って座っ
て、名乗り合ったあれ。あなたが一番先に指名されて係りの人にどうぞと言われたら、あ
なたったら『オジです』とたった一言しかいわないんだから。」
男性
「だってこんなとき名前を言ったってすぐ覚えられるわけじゃなし、無意味だから新郎と
の関係を明らかにすればいいと思ったんだ」
別の男性
「そしたらケッサクだったよなあ。後の人も皆右同じに『オジです』『オバです』『イト
コです』と一言しかいわないんだから。ありゃ、なんじゃないな」
再び女性
「あれじゃあ、男です、女です、っていってるようなもんで、見ればわかる、つーの!」
あはは、と3人は大笑い。
聞いていた私ももらい笑い。オジ、オバのオンパレードのナンセンスな自己紹介の場を想
像するとおかしくて、おかしくて一生懸命笑いをこらえた。
でも、職業も肩書きもとっぱらった裸の人間と人間との結婚がしのばれるし、きっと思い
出深い結婚式になるだろう。 |