6/1のねこさん 文は田島薫
役者心あるねこさん
土曜の昼間、雨の切れ目に陽が射して来たころ、となりのバレエ教室の梅ちゃんが家の前
の道路をのんびりと歩いて行くのを2階の居間からながめてちょっとお互いにあいさつか
わしたのが、先週のねこさん見たすべてだったんで、2、3週間ぐらい前に会ったねこさん
の話でこのコラムをうめたい。(うめるだけか〜)
自転車で図書館行く途中の住宅、道路と垂直に奥に向かって小さいんだけどなかなか小じ
ゃれた造りの建物と庭が並んでる、その庭の方にうすちゃのねこさんがゆっくり入って行
くのが見えた。
だいたいこんな場合はそこの植え込みにしっこする、ってパターンが多いんで、だろう、
ってながめてた。細い植木やつつじで向こうまで伸びた土盛りに上がって、そばの木のに
おいなどをかいでるもんで、やっぱり、って思った時にねこさんこっちの視線に気がつい
たようで、ちらっとこっちふり返ったんだけど、ぼくはしっこをしに来たんじゃありませ
んよ、庭をながめに来たんです。って感じでそこを素通りし、ちょっと中空に軽く首を回
してあたりの景色を楽しむ素振り。またゆっくり歩き出し、そばにちらばってるつつじの
はなびらのにおいをかいだり踏みしめたりして、ゆっくり散策を楽しんでる風。やがて、
もうさっきの人は帰ったろうか、ってちらってふり返る、ありゃ、まだ見てるぞ、困った
な〜、いやいや、ぼくは庭を楽しんでいるんだ、ってしかたなくまたゆっくり歩いて行く。
すると左手に家の玄関が見える、ちょっと引っ込んでて、あの人から死角になる、ここを
舞台のそでに決めよう、ってそっちへ方向を代え、またゆっくり歩いて行き、そでに身体
を少しずつ隠して行き、最後の足だけ見せて水平に伸ばして止めてから、はい、これで幕
です、って消えた。